【年末調整】扶養控除の金額計算方法!年金生活者や障害者、子供はどうなるかも!

みのりたです。

会社員にとって数少ない節税のチャンス、それが年末調整ですね。毎年時期が来ると、会社からあれ出せこれ出せといくつもの書類を渡され、私も言われるがままに書いて提出していました。

でもって12月にちょっとしたボーナスをもらっていつも喜んでいたんですが、自分のお金のことですから、せっかくならきちんと把握しておきたいと思いませんか?

今回は年末調整で所得税が還付される控除の中でも、最も幅広く適用されているであろう「扶養控除」について、どんな人がいくら控除されるのか、解説したいと思います。

年末調整で戻って来るお金については、こちらでまとめています↓↓↓
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扶養控除とは

扶養控除とは、ご自身の収入でご家族(親族)の生活を養っている場合に、その分生活が大変だろうということで、所得税を少し軽くしてもらえる制度のことです。

ここでいう親族には、配偶者(妻や夫)は含まれません。なぜなら、配偶者に関しては配偶者控除という別の控除が用意されているからです。扶養控除の主な対象者としては、子供や老親が当てはまりますね。

配偶者控除についてお知りになりたい方はこちらをどうぞ↓↓↓
【年末調整】配偶者控除解説2019!必要書類や金額の計算方法を具体的に解説!
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ちなみに、この「自分(正確には納税者)が扶養している親族」のことを扶養親族と呼びます。お役所情報ではよく使われる言葉ですので、覚えておいても良いと思います。

扶養親族の対象となる人

具体的に扶養親族として申請できる対象者は、配偶者控除同様いくつか条件があります。下の条件の全てを満足している必要がありますが、実は2番目以降は配偶者控除と同じ内容になります。

扶養親族の対象範囲

  • 6親等以内の血族(ご自身の家族・親戚)及び3親等以内の姻族(配偶者の家族・親戚)または里子や市町村長から養護を委託された老人である
  • 納税者と生計が一緒であること
  • 年間の合計所得額が38万円以下(2020年分以降は48万円以下)であること
    ※収入が給与のみの場合は給与収入が103万円以下
  • 青色申告者の事業専従者として全く給与の支払いを受けていない、又は白色申告者の事業専従者でないこと

”〇親等”の対象者一覧

改めて1親等、2親等って具体的に誰が当てはまるの?と疑問に思われるかも知れませんね。主だった関係を一覧表にしてみましたので、参考にして下さい。

自分の血族であれば、かなり幅広い範囲に渡って扶養が認められることがわかりますね。6親等なんて、もはや血が繋がってる実感はあまり無いんじゃないでしょうか。

夫や妻は何親等?
表にも記載しましたが、配偶者は0親等(親等なしと言うことも)になります。直接血のつながりはないけれど、家族としては子どもよりも近い存在として位置づけられているんですね。

個人的にはこれを初めて知った時、結婚の重みを実感したものです。

「生計が一緒」の意味

生計が一緒というのは、1人の納税者が複数の人の生活費を定期的に支払い、全員の生活を支えているということを指しています。ただしここには同居しているかは特に問われませんので、例えば1人暮らしをしている大学生の子がいるという場合などは、生活費や教育費を支払っている証拠を示せば、扶養親族として認めてもらうことができます。

その一方、親族同士で同居をしていれば、よほど生活が別個であると判断されない限りは、扶養親族として認められることが多いです。後でご紹介する控除の金額から言っても、同居の方が有利であることは間違いないでしょう。

 

年間の合計所得金額制限について

専業主婦や扶養内パート家庭の方であれば、配偶者控除を受けているでしょうからよくご存知かもしれませんね。

パート・アルバイト勤務の場合額面収入103万円以下まで扶養控除が認められますが、もしお子さんがネット収入を得ていたり親御さんが自営業をされていたりすると、計算の基準は合計所得金額となります。所得つまり収入から必要経費を差し引いた金額が38万円以下でないと扶養親族に含めることができませんので、ご注意ください。

収入と所得の違いについては、こちらの記事の序盤でもご紹介しています↓↓↓
【住宅ローン控除】所得(年収)制限とは?退職金をもらった時はどうなるのかも!
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ちなみに、パートと自営業で金額が大きく違うじゃないかと思われそうですが、給与収入には誰にでも適用される「給与所得控除」というものがあり、扶養控除の対象となる年収なら、収入から65万円が自動的に差し引かれるのです。サラリーマンにとっての経費を一律で定めているんですね。

ですから、103万円 – 65万円 = 38万円となり、結局所得38万円以下という決まり自体は変わらないのです。まぁ、103万円しか稼がないのに経費が65万円ってすごいあり得ない数字ですが…

事業専従者とは

青色申告だの白色申告だのというのは、自営業の方ならよくご存じと思いますが、事業従事者というのは、親族が経営する会社で働く場合、その給与を経費扱いで落とせる人を指します(白色申告の場合は直接落とせるわけではありませんが)。

自分は会社員だから関係ないと思われる方も多いと思いますが、実はご自身が会社員でも微妙に関係するパターンがあります。

例えば親族が経営する会社のお仕事を親御さんが手伝っているというケース。てっきりパート従業員扱いだと思ったら事業専従者になっていた、ということもあり得ます。

心当たりのある方は、扶養親族に入れたい方へ事前に確認を取りましょう。

 

扶養親族としての対象判定基準日

以上ご説明してきた条件がどのタイミングで当てはまっていれば良いかというと、その年の12月31日時点です。

つまり、例えば子供がアルバイトをしていて、12月頭時点では103万円に未達だったけれど12月の給料日が来れば103万円を超えてしまうという場合、扶養親族としてカウントすることができませんのでご注意ください。

扶養控除の金額

具体的に扶養控除としていくら所得から差し引いてもらえるのか、その一覧表が以下になります。全て扶養親族1人当たりの数字になります。

注:同居老親等とは、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、普段同居している人を指します。

この表によると、1番学費がかかる大学生のお子さんを想定しているであろう「特定扶養親族」に対する控除額が最も大きくなっていますね。

次に控除額が大きいのは、老親と同居している場合。基本的には無収入に近い親御さんという前提ですから、これまた負担が大きいと判断されるのでしょう。

こうして見ると、現実の生活を想像して控除額が決められているであろうことがわかります。

扶養控除によって還付される所得税の計算方法

さて、控除される金額はわかったけど、それより実際に扶養控除によってどの位の税金が戻って来るのか知りたいという方もいらっしゃるでしょう。ここでは簡単に還付される所得税の金額の計算方法をご説明します。

STEP1 合計所得金額の計算

額面年収から所得金額を計算するには、以下の式を使います。

額面収入 - 社会保険料(厚生年金保険料+健康保険料+雇用保険料+介護保険料) ー 給与所得控除 = 所得金額

こちらの記事でも説明していますが、給与所得控除というのは額面収入の金額に応じて予め定められたもので、下表から求めることができます。

 

STEP2 課税所得に対する所得税率の算出

STEP1で求めた所得金額から非課税所得や他の控除を差し引いた金額に応じて、所得税の税率が決まります。2019年現在、所得金額と所得税率の関係は下表のとおりです。

なお非課税所得としては以下のようなものが挙げられますので、これらは所得から除外しましょう。まぁ大抵の会社員に当てはまるのは通勤手当や出張旅費くらいだと思います。

  • 通勤手当(月額15万円まで)
  • 出張・転勤旅費
  • 遺族年金
  • 奨学金
  • 損害保険金や損害賠償金
  • 雇用保険、健康保険、国民健康保険の保険給付等
    ※育児休業給付金など
  • 相続や贈与されたお金
  • オリンピックやノーベル賞などの賞金
    ※公益性のある賞に限ります
  • 宝くじの当選金

STEP3 適用される扶養控除の金額確認

前項「扶養控除の金額」の一覧表を元に、ご自身が受けられる控除額を確認します。

 

控除によって還付される金額の計算

下式を使って、戻って来る金額を計算します。

扶養控除の金額 × 所得税率 = 実際に還付される金額

 

計算の具体例

例)年収600万円の人が高校生の子ども1人を扶養している場合(社会保険料の合計金額:90万円、非課税所得20万円と仮定)

まず合計所得金額は、600 ー 90 ー (600 × 20% + 54) = 336万円

そこから非課税所得を差し引いた課税対象所得は、336 ー 20 = 316万円

次に所得税率表から、所得税率は10%

高校生=一般の控除対象扶養親族なので、扶養控除額は38万円

よって還付される所得税の金額は、38万円 × 10%(0.1) = 3.8万円

12月の年末調整で、給与支払い時にこの38000円が上乗せされて支払われることになります。

この例は他の控除を一切考慮していませんので、例えば生命保険や確定拠出型年金に加入している場合などはまた変わってくる可能性もあります。あくまで簡易的に戻って来る金額をイメージするためのものですので、その点ご了承ください。

扶養親族Q&A

障害者を扶養している場合

障害をお持ちの方を扶養している場合、これまで説明してきた扶養控除にプラスして、さらに控除を受けることができます。それが障害者控除と呼ばれる制度で、控除金額は以下の通りです。

※注:同居特別障害者とは、特別障害者の中でも納税者自身かその配偶者、または納税者と生計を一にする親族のいずれかと常に同居している方です。

障害者控除に年齢制限はありませんので、児童手当の対象だからと扶養控除の対象外だった16歳未満のお子さんであっても受けることができます

なお、ここでいう「障害者」とは以下の通り定義されており、いずれかに当てはまる必要があります。

  1. 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人(特)
  2. 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人※(特)重度の知的障害者と判定された方
  3. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
    ※(特)障害等級が1級の場合
  4. 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人
    ※(特)障害の程度が1級又は2級の場合
  5. 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が(1)、(2)又は(4)に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人
    ※(特)市町村長、特別区区長や福祉事務所長が認定した場合
  6. 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人
    ※(特)障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの場合
  7. 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人(特)
  8. その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする=介護を受けなければ自ら排便等をすることができない程度の状態にあると認められる人(特)

※(特):特別障害者と判断される条件

参考:障害者控除(国税庁HP)

年金を受給している親を扶養している場合

年金収入はあるけど生活が苦しい両親を扶養に入れてあげたい、という場合もあるでしょう。これまた年収103万円までがターニングポイントなのか?というと、少し条件が変わります。

収入源が年金のみであれば、「扶養控除によって還付される所得税の計算方法」でご紹介した給与所得控除65万円の代わりに、公的年金等控除額というものが適用されます。扶養対象となる老親の年齢によって異なり、以下の金額が38万円以下であれば、扶養控除を受けることができます。

  • 65歳未満の場合:収入 ー 公的年金等控除70万円
  • 65歳以上の場合:収入 ー 公的年金等控除120万円

年金収入に置き換えると、65歳未満の親御さんなら年収108万円以下、65歳以上の親御さんなら年収158万円以下までが対象となります。気になる方は、親御さんの年金額を1度確認してみてください。

参考:高齢者と税(年金と税)(国税庁HP)

 

老親が老人ホームに入っている場合

扶養に入れていた親御さんが老人ホームへ入居した場合、扶養控除はどうなるのでしょうか。元々別居だった方なら状況は変わらないと思いますが、それまで同居していたのに老人ホームへ入った場合、同居とみなしてもらえるかどうかで、控除の金額が変わりますしね。

結論から言うと、老人ホームへ入所してしまうと施設が住居であるとみなされるので、同居老親等ではなくなります

一方、親御さんが病気で入院をしているような場合は、たとえそれが1年以上にわたるような長期であっても、同居老親等として認められることになります。

参考:扶養控除(国税庁HP)

 

16歳未満の子供のみを扶養している場合

16歳未満のお子さんについては児童手当が支給されているため、扶養控除には含めることができません。みのりた家も保育園児2名を私の扶養に入れていますが、年末調整で税金が還ってくることはありません。

何だか損をしている気分と思われるかもしれませんが、最も控除額の大きい大学生でも控除額は63万円。実際に還付される所得税は庶民レベルであれば6万円~19万円程度です。

一方児童手当は3歳以上でも1万円/月に受け取ることができますので、年間12万円。年収が低い方ほど、児童手当の方が恩恵を受けられる計算になりますね。

逆に所得が900万円以上あるような世帯にとっては、児童手当は5000円/月しかもらえないし扶養控除も使えないしで、全然うま味はない制度ということになります。。。

まとめ

年末調整で受けられる控除のうち、最も対象者が多いであろう扶養控除について、その対象者や金額など解説しました。

扶養親族とは、配偶者以外にご自身の収入で養っている親族を指し、対象となるのは6親等内の血族(自分の家族親戚)または3親等内の姻族(配偶者の家族親戚)です。

控除の金額は、ご自身の収入にかかわらず扶養親族の年齢によって決められており、38万円~63万円となっています。子どもや老人など基本的には働けない方が対象となっているため、配偶者控除より控除額が大きめです。

その他、障害者控除や年金暮らしの老親、再婚時の連れ後の扱いなど、こんなパターンってどうなってるの?というQ&Aもいくつかご紹介していますので、「自分の家はどうなるんだ?」と気になっている方は、是非確認してみてください。

その他、保険料控除や住宅ローン控除など年末調整で戻って来るお金について解説しています↓↓↓
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