住宅ローン繰り上げ返済はすべきか?子持ち家庭のタイミング・金額・割合など

みのりたです。

住宅ローンを返済中の身で、家計の見直しや節約、資産を増やすことを考えた時、誰でも一度は繰り上げ返済を考えたことがあるのではないでしょうか。生活費の中で大きな比率を占める住宅ローンの負担が軽く/なくなれば、生活がだいぶ楽になるし、貯金のペースもグッと上がりますよね。

ですが一方で、住宅ローンには団信もあるし、今は低金利だからあまり急いで返す必要もない、という意見もあります。

みのりたは色々シミュレーションした結果、住宅ローン減税(控除)が終わるタイミングで一気に繰り上げ返済をしようと考えていますが、どうしようかと迷っていらっしゃる方も多いのではないかと思います。

今回は、そんな迷える子羊(?)の皆さんに、住宅ローンは繰り上げ返済すべきなのか?検討材料をご提供したいと思います。

繰り上げ返済をする人の割合

世の中の住宅ローンを借りている人達は、繰り上げ返済なんてしているのだろうか?それはどれ位の割合なの?そんな疑問について答えてくれる調査データが2つあります。

1つ目は独立行政法人の住宅金融支援機構が毎年実施している、「民間住宅ローンの貸出動向調査結果」です。民間の住宅ローンを取り扱う金融機関を対象にしたアンケート調査で、住宅ローンの貸出実績などについてまとめられています。

※2018年5月現在、最新の調査結果は2017(平成29)年度版です。

この中の住宅ローンの貸出期間についてという項目で、繰り上げ返済の実態が垣間見える結果が出ています。

調査結果グラフ1

出典:民間住宅ローンの貸出動向調査結果 2017(平成29)年度

上のグラフ上半分の「約定貸出期間」は、実際に金融機関が貸し出した住宅ローンの期間ですから、逆に言えば、皆が借りている期間ということです。2016年度で平均は25.6年。20年より長い期間で借りている人が8割を超えていますから、やはり長期間に渡って返済義務を負っていることが分かります。

ところがです。下半分の「完済債権の平均経過時間」は、貸し出してから完済されるまでに経過した期間を示しており、平均が15.0年となっています。それどころか、先ほどとは逆に、20年以下で完済している人が8割を超えているのです。これはつまり、かなり多くの人が住宅ローンの繰り上げ返済を行っていると考えられるのです。

また、不動産情報サービスのアットホーム株式会社が、首都圏(1 都 3 県)在住、住宅ローンを組んで完済した、子供のいる男性サラリーマン320名を対象に行った『「住宅ローン完済」の実態調査』も、同様の結果を示しています。

調査結果グラフ2

出典:アットホーム(株) 「住宅ローン完済」の実態調査

上の質問「住宅購入時の、住宅価格、頭金額、親からの援助額、住宅ローン借入額、住宅ローンを組んだ時に設定した返済期間、繰り上げ返済した期間、ローン完済までの期間、年収(住宅購入時)、年齢(住宅購入時)を教えてください」に対する回答表を見ると、ローン設定期間平均25.0年なのに対し、完済までの期間平均13.7年となっています。

更に下の質問「住宅ローンを、最初に組んだ時の返済時間よりも早く完済しましたか?」に対して、何と9割もの人が「はい」と答えています。

先ほどの住宅金融支援機構とアットホームの結果を比較しますと、両者に矛盾はありません。やはり住宅ローンを完済した人のほとんどは繰り上げ返済をしている、と言えますね。

まとめ表1

調査機関 ローン設定期間
完済までの期間 繰り上げ実施の割合
住宅金融支援機構 26年
15年 8割以上
アットホーム 25年
14年 9割

※数字は四捨五入しています

繰り上げ返済のタイミング

では、実際どのくらいの金額をどのタイミングで繰り上げ返済しているのでしょうか?そのものの調査結果を見つけることはできませんでしたが、先の『「住宅ローン完済」の実態調査』の結果から推察してみました。

ここで仮定すべき項目は以下の4つです。次項から順を追ってご説明します。

  • 借入金額
  • 繰り上げ返済で短縮した期間
  • 借入金利
  • 繰り上げ返済の方法

※今回は期間短縮型の繰り上げ返済を行ったものとします

借入金額の平均と繰り上げで短縮した期間

調査結果グラフ2の中の表によれば、住宅ローンの設定期間の平均25年に対して完済期間は14年ですから、単純な平均で9年間は期間を短縮しているようです。

また、完済者のローン借入額平均が2472万円、丸めて2500万円ですから、2500万円の住宅ローンを25,6年で組み、繰り上げ返済で期間を9年短縮して完済したという設定が出来上がります。

 

借入金利

同調査の別の設問を見てみます。「住宅ローンを最初に組んだ時のローン種類を教えてください。」という設問に対しての回答が、下の回答結果グラフ3です。

回答結果グラフ3


出典:アットホーム(株) 「住宅ローン完済」の実態調査

全期間固定型を選んだ人が過半数を超えています。低金利ということもあり、目先の支払い金額を抑える目的で変動金利を選ぶ人が多い中(みのりたもその1人なのですが)、かなり堅実な方が多いです。

ということで、今回は全期間固定型を選択したと仮定し、調査当時(2014年)の平均的な金利2%で借り入れたとします。

繰り上げ返済方法

「住宅ローンを繰り上げ返済した理由は?」と「 住宅ローンを繰り上げ返済をした方法は?」という設問への回答から、返済タイミングについて推察します。

調査結果グラフ4

出典:アットホーム(株) 「住宅ローン完済」の実態調査

ここから垣間見えるのは、返済についての3つのスタンスです。

  • 借金による利息の支払いがある日々を心苦しく思っており、早くその生活から解放されたい
  • 他に運用方法を知らない(繰り上げ返済が思いつく最良の資産運用だと思っている)
  • 日々の節約やボーナスなどまとまった収入を繰り上げに回すなど、節制ができている

これらの事から、繰り上げ返済のタイミングとしては、割と早い年からボーナスのある時期に合わせて定期的に繰り上げ返済をしていたのではないかと推察されました。

繰り上げ返済の金額

それでは、繰り上げ返済の諸条件(借入金額、短縮期間、タイミング)を使って、住宅ローン返済シミュレーションを行い、いくら繰り上げ返済に使ったのかを推定してみます。条件をおさらいしますと、以下のようになります。

  • 借入金額:2500万円
  • 借入期間:25年間
  • 繰り上げ返済で短縮した期間:9年間
  • 借入金利:2%
  • 繰り上げ返済の方法:ボーナス月に定期的にまとまった額を返済

ただし、ローンを組んだ直後は預貯金も減っているし、生活で何かと物入りなことも多いと思ったため、繰り上げ返済は2年後より開始することにしました。

この結果、各ボーナス月に40万円を毎回返済し続ければ、14年1ヶ月で元本2500万円の住宅ローンが完済できることが分かりました。そしてその場合、繰り上げ返済に使った合計金額は1040万円となりました。

また、この繰り上げ返済によって軽減できた利息の合計金額は、1540万円程度でした。つまり投資として考えると、1040万円を投資して9年間で500万円増やしたことになります。

どうでしょうか?金利が2018年現在と変わっているので、一概には言えませんが、この金額が多いと思うか少ないと思うかで、あなたが繰り上げ返済をすべきかすべきでないかが大きく変わってきます。

繰り上げ返済をすべきか迷ったら

皆がかなりの割合で繰り上げ返済をしていることは分かった。更にコツコツと資金を貯めて、早い時期から定期的に繰り上げ、1040万円を使って500万円のリターンを得ていることも分かった。

…で、結局自分は繰り上げ返済すべきなのか?

この疑問への答えを知るには、以下の質問に「はい・いいえ」で答えてみて下さい。

  1. 繰り上げ返済の他にも良い資産運用方法を知っている
  2. 繰り上げ返済で軽減できる利息の金額(例えば上記の500万円)よりも多い金額を、繰り上げ返済で短縮できる期間(例えば上記の9年間)で増やせる自信がある
  3. 繰り上げ返済に回すお金(例えば上記の1000万円)は全額投資信託等の投資に回せる
  4. 繰り上げ返済用の貯金は、特に意識して貯めていない
  5. もし繰り上げ返済をしたい金額を現在の預貯金から差し引くと、3ヶ月以内に生活できなくなってしまう
  6. 子供の大学入学など、大きな出費(100万単位で預貯金が減るもの)が1,2年内にある
  7. 普通に返済を続けても(繰り上げ返済をしなくても)定年までに完済できる見込みである
  8. 現状でどういう繰り上げ返済の仕方をすれば一番お得になるのか知らないが、何となく繰り上げした方がいい気がする
  9. 住宅ローンの借入金利は1%未満で、かつ現在も住宅ローン減税(控除)を受けている
  10. 住宅ローンの借入金利がここ1,2年で変わる(上昇する)予定はない(景気の変動を除く)
  11. 住宅ローン減税(控除)の控除上限額以上に所得税を納めている
  12. 住宅ローン減税(控除)の控除可能額はローン残高以上である

回答の中で「はい」はいくつありましたか?その数によって、住宅ローンを繰り上げ返済すべきかどうかが大まかに判断できます。

「はい」の数が0~4個

積極的に繰り上げ返済を行うべきと思われます。まずはご自身の預貯金額、大きな出費などライフプランを立てた上で、適切な返済額を調べてみましょう。恐らくあなたの場合は、なるべく早く繰り上げ返済した方が良いと思われます。

 

「はい」の数が5~8個

すぐに焦って繰り上げ返済をする必要はなさそうです。他の資産運用方法なども調べつつ、どちらがよりお得になるか、比較検討してみましょう。ただ、数年経つと状況が変わる可能性がありますので、一度ご自身の返済プランを詳しく立てられることをお勧めします。

 

「はい」の数が9~12個

恐らくあなたの場合は、繰り上げ返済をするよりは、別の手段で資産を運用された方が効率的と思われます。どちらかと言えば、繰り上げ返済すべきでない方でしょう。みのりたに言われるまでもないかも知れませんね。

 

みのりたの個人意見

みのりた個人の意見としては、他にもっと高金利の資産運用方法はありますが、繰り上げ返済はすべきと考えています。なぜなら、繰り上げ返済はほぼノーリスクでリターンが得られる、かなり安全な資産運用方法だからです。他の資産運用方法と併用するのがベストですが、こんな美味しい手段はそうないと思います。

この辺の詳細については改めて別記事でご紹介したいですが、投資について考える際は、あまり金利や利率だけに捕らわれず、最終的に手にする金額の絶対値を意識することをおすすめします。金利が何%だろうが、投資だけで10年、20年後に数百万円を手に入れるのは、そう簡単ではありません。

また「投資にはリスクがあります」というお決まりの文句がおざなりに使われますが、特に最近投資を始めた方や積立投資しか経験のない方(売却経験なし)は、「売るべき時に売れない」ということが大きなリスクになることを知っておくべきです。

株でも投資信託でも、買うのは簡単なんですよ。自動的にも買えますし。しかし売り時を見極めるのは本当に難しいんです。特に「売り」の経験が少ない方にとっては。これは理屈云々というより、人間心理、云わば「欲」の問題です。

今まで10年以上株式投資を続けてきて、数々の失敗をしてきた私が言うんですから、間違いありません!(自慢になりませんが)

何にせよ売り時は誰も教えてくれませんから、その難しい判断を自分で正しくできるのか?

そう考えると、銀行にお金を納めさえすれば確実に将来の負債額が減る繰り上げ返済は、投資経験の少ない庶民にとって大きなメリットがある、というのが、みのりたの意見です。

まとめ

今回は「住宅ローンの繰り上げ返済をすべきか」問題について、日本人特有の「皆はどうなんだろう?」という切り口から、以下の3つの流れで迫ってみました。

  1. 世の子持ち世帯の人々は繰り上げ返済をしているの?
  2. しているなら具体的にはどんな感じで?
  3. じゃあ自分はすべきなのかな?

結果としては、みのりたの予想以上に皆さん繰り上げ返済を頑張っていらっしゃっており、負債(借金)をなくして一刻も早く精神的負荷から解放されたいという気持ちが、ひしひしと伝わるようでした。周りが気になっていたという方は、是非参考にしてみて下さい。

また記事後半では、ご自身が繰り上げ返済をすべきかどうかについて判断するための質問をご用意しました。繰り上げ返済について迷っていらっしゃる方の、ちょっとした道標にはなるかと思います。

住宅ローンは、繰り上げ返済するにしてもしないにしても、一般庶民にとっては恐らく人生で最も長く付き合うことになる借金です。どうせなら払う利息を最小に、もらえるお金を最大にしたいものですよね。