みのりたです。
年金制度は複雑ですが、女性にとってみると、男性に比べ更に複雑怪奇なものとなることが多いです。それはまだ現代日本において女性が結婚や出産・転勤などのライフステージによって、生活を大きく変えざるを得ないためでしょう。
今回はサラリーマンの奥様(専業主婦)にスポットライトを当て、将来は一体いくら年金をもらえるのか?どういう理屈でその金額が決まっているのかなど、制度・仕組みについてご紹介します(本記事では、夫の扶養を外れた兼業主婦の方は対象外です)。
個人的に専業主婦にとっての年金は、わずかばかりとは言え国からもらえる主婦業への報酬みたいなものだと思うので、主婦の皆さんは是非ご確認ください。
目次
サラリーマンの妻(専業主婦)がもらえる年金
昭和の象徴、仕事一筋の夫と専業主婦の妻という家庭において、サラリーマンの妻は一体どんな年金がもらえるのでしょうか?
初めに簡単に年金制度のあらましをおさらいしておきますと、2019年現在の大前提として、20歳以上60歳未満の人は全て国民年金に加入しなければなりません。そしてその加入者(被保険者と言います)は大きく3つのパターンに分けられています。
- 第1号被保険者:20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人等。2号、3号以外の人が全て当てはまります
- 第2号被保険者:民間会社員や公務員など厚生年金、共済の加入者。皆さんの旦那さんがこれに当てはまります
- 第3号被保険者:厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円未満の人)
参考:日本年金機構「第1号被保険者」,「第2号被保険者」,「第3号被保険者」
読んで頂くとわかると思いますが、サラリーマンの妻である専業主婦の方は、第3号被保険者に当てはまります。つまり、専業主婦の方でも自動的に国民年金に加入していることになるのです。
ここでポイントとなるのは次の2点です。
1. 年金保険料の支払いは不要
国民年金に加入していると言っても、第1号・第2号被保険者では自分で支払わないといけない国民年金保険料(2019年現在16410円/月)を、第3号被保険者本人が支払う必要はありません。かと言って、夫がその分多めに年金保険料を支払っている訳でもありません。
では誰がサラリーマンの妻の分を負担しているのでしょう?それは他の厚生年金加入者全てです。皆が少しずつ分け合って負担することで、この制度は成り立っているのですね。
実質的な費用負担なく、将来はご自身で年金を受け取ることができるのが、専業主婦の方の年金の特徴です。
2. もらえる年金は国民年金ベースのみ
勘違いをされるケースがあるようなのですが、サラリーマンである夫は国民年金+厚生年金に加入していても、その妻は厚生年金がもらえる訳ではないという点には注意が必要です。
専業主婦の方が将来もらえる年金は、あくまで国民年金ベースの老齢基礎年金のみです。
夫が将来厚生年金を20万円もらえるとして、一家としての収入はその倍になる訳ではなく、妻の年金は5~6万円程度、合計で25万円程度になるケースが多いのです。
サラリーマンの妻の年金扶養条件
専業主婦もしくは夫の扶養内でパートをされている主婦が、自分で年金保険料を負担することなく国民年金を受け取れる条件(年金の扶養条件)はどうなっているでしょうか?具体的には、以下の全てを満足する方が対象者となります。
- 第2号被保険者に扶養されている
- 20歳以上60歳未満である
- 年収が130万円未満である
ちなみに、この扶養条件を満たすには結構注意事項が多いので、主な注意点をご紹介しておきます。
- 同じ専業主婦でも、第1号被保険者(自営業者)に扶養されている方は対象外となってしまいます
- 年収要件については、他の扶養条件(配偶者控除など)よりも条件が厳しめに設定されています。パートで働いている方で年金の扶養を外れたくない方は、年収調整が必要です
- 夫が定年退職等で第2被保険者でなくなると、第3号被保険者も自動的に第1号被保険者の扱いとなり、ご自分で国民年金保険料を支払わねばならなくなります
サラリーマンの妻がもらえる年金受額
サラリーマンの妻がもらえる年金は国民年金ベースであるというのは先述しましたた。では具体的に、将来いくら年金を受け取ることができるのでしょうか?実は国民年金の仕組みだけで考えると、将来の受給額(支給額)を計算するのは割と簡単なのです。
ここでまた年金制度の仕組みを簡単におさらいしておきますと、国民年金を支払い続けた場合に受け取れる年金を「老齢基礎年金」と言います。老齢基礎年金については、昭和16年4月1日以前に生まれたかどうかで支給額が異なりますが、本ブログを見て下さる方は恐らく全員昭和16年4月2日以降に生まれた方でしょうから、ここでは新しい制度を前提としてご説明します。
まず、国民年金の加入期間は20歳~60歳までの40年間。この40年間フルにきちんと年金保険料を支払った場合に受け取れる年金額は、2019年現在780100円(年額)です。月額に換算するとおよそ65000円ですね。
この金額から、事情があって保険料の支払いを免除されていた時期、未納期間を差し引いた分が、あなたが実際に受け取れる年金額になります。
具体的な支給額計算方法については、日本年金機構のサイトに式が記載されていましたので、それを引用させて頂きますね。
引用:日本年金機構「老齢年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)」より
ちょっと式が分かりずらいかも知れませんが、要は普通に年金保険料を支払っていた期間と支払い免除をされていた期間を足し合わせて、40年間の内「支払いをした(ことにできる)期間」の割合を計算するイメージです。
この中でサラリーマンの妻で扶養されている期間については、保険料納付済月数=きちんと国民年金保険料を納めた期間としてカウントされますので、未納期間や免除期間がないと仮定した場合、サラリーマンの妻としてもらえる老齢基礎年金の金額は以下の通りになります。
結婚期間 | 年金受給額 | |
年額 | 月額 | |
5年間 | 97,512円 | 8,126円 |
10年間 | 195,025円 | 16,252円 |
15年間 | 292,537円 | 24,378円 |
20年間 | 390,050円 | 32,504円 |
25年間 | 487,562円 | 40,630円 |
30年間 | 585,075円 | 48,756円 |
35年間 | 682,587円 | 56,882円 |
40年間 | 780,100円 | 65,008円 |
※小数点以下は切り捨て
私は結婚16年なんですけど…など、ご自身の年数をピンポイントで計算したい場合は、以下のように計算しても良いです。
780100円 × 結婚年数 ÷ 40年 =サラリーマンの妻として受け取れる年金額
ただし繰り返しになりますが、この金額は旦那さんが厚生年金・共済年金に加入し続けていることが前提です。もしも転職等で旦那さんに厚生年金未加入期間が存在する場合、その期間奥様分の国民年金保険料を納めなければ、受給額も減額されてしまいます。転職階数が多いご家庭などは要注意ですね。
サラリーマンの妻の年金、夫の死後はどうなるか
もう1つ、専業主婦の方が年金について気になる点と言えば、夫の死後自分の年金はどうなってしまうのだろう?ということでしょう。ここにも勘違いが多く潜んでいますので、大事なことは年金を受け取る前に知っておきましょう。
夫の死後の妻の扱い
まずは夫の死後、妻の被保険者としての扱いがどうなるかですが、当然ながら第3号被保険者ではなく第1号被保険者へと変わります。つまり基本的に以後の国民年金保険料(改めてフルタイムで勤める場合は厚生年金保険料)は妻自身が支払っていく必要があるのです。
夫を亡くした妻は様々な社会保障制度を利用することができますが、年金保険料を払わなくて良いということにはならない点には要注意です。
夫の死後受け取れる年金
もう1つ覚えておきたいのが、ある程度の期間年金を支払い続けていた夫が亡くなった場合、その妻には遺族年金を受け取れる資格があるということです。
サラリーマンの妻の場合、遺族厚生年金というものが支給されますので、夫の死後受け取れる金額は大まかに以下の通りとなります。
ご自身の老齢基礎年金+遺族厚生年金
遺族厚生年金の仕組みについては、子どもの有無や夫が亡くなった際の妻の年齢などによって支給額が異なるので、本記事では詳細を省略しますが、よく言われるのは夫が受け取っていた(受け取るはずだった)厚生年金の金額の3/4が遺族厚生年金として受給できるということです。
これを聞くと、例えば月に20万円の年金を受け取っていた夫が亡くなった場合、その妻は20万円 × 3/4 = 15万円受け取れると思いがちですが、実際はそうではありません。
夫の受給額20万円は基礎年金と厚生年金を加算した金額であり、遺族年金として受け取れるのは厚生年金部分のみなので、受給額は次の計算で求められます。
(20万円-6.5万円)× 3/4 = 10.1万円
※夫が国民年金保険料を全期間きちんと収めたものと仮定
実際には妻の年齢や子供の有無などによりここへ加算が行われ、もう少し支給額は増えることが多いですが、それでも先の15万円に及ばないケースもあります。
遺族年金については別の機会に詳しく解説してみたいと思いますが、要は夫の死後もそれまでと同じ生活水準を保てる予定が、思ったより当てにならないことが(割と)多いよ、という点は覚えておいた方が良いと思います。
まとめ
サラリーマンの奥様(専業主婦)が将来受け取れる年金についてご紹介しました。
サラリーマン(第2号被保険者)に扶養されている妻は第3号被保険者と呼ばれ、ご自身で年金保険料を納めずとも、自動的に国民年金保険料を納めている扱いとなります。従って結婚生活を続けている限りは、老齢基礎年金という基本的な年金が将来保証されることになり、最大で月に6.5万円ほど受給することができます。
また夫の死後には第3被保険者の資格を失い第1号被保険者となりますので(65歳未満の場合)、遺族年金を受け取れるにしても、以後の国民年金保険料の支払いが必要になる点は覚えておきましょう。
専業主婦も立派な職業です。直接的なお給料はもらっていないかも知れませんが、年金保険料を払わずに国民年金が受給できる点で言えば、その分は生涯でもらえるお給料のようなものではないでしょうか。
日々旦那様を支える奥様方は、将来設計を考える意味でも、是非ご自身の年金受給額について1度計算してみて下さい。