【仕組預金】スイッチ円定期預金とは?どんなリスクがあるのか詳しく解説!

みのりたです。

日々貯金に励む一般庶民にとって、少しでも資産を増やせる手段を知ることは、大きな関心事の一つだと思います。

しかし最近は超低金利の影響で、普通預金や定期預金、国債といった従来の安全資産だけでは、ほとんど資産を増やすことができません。と同時に、近頃は銀行もなかなか利子収入が見込めないためか、全体的に手数料ビジネスへと舵を切っています。

そんな中、よく見かけるのが「仕組預金」と呼ばれる新しいタイプの金融商品です。従来の定期預金金利が0.1%、0.2%と雀の涙なのに比べ、1%以上の金利を謳う商品も珍しくありません。しかも「定期預金」の名が付いている物も多いため、一見すると安全で非常にお得な感じがします。

果たして本当にそうでしょうか?

今回は、そんな仕組預金の内、二重通貨預金と呼ばれる商品について、じぶん銀行の「スイッチ円定期預金」を例に、なぜ高金利なのか、リスクやデメリットは無いのか?調べてみましたので解説します。

結論から申し上げますと、みのりたは決して手を出さない商品ですので、金利だけにつられることのないよう、内容をよく理解しましょう。

仕組預金の基礎知識

仕組預金とは

Wikipediaによりますと、仕組預金とはこう記されています。

仕組債の外側の箱を預金に変えたものと考えればわかりやすい。

仕組預金の例としては、(a)円で預け入れてその時に約定した外貨で運用し、満期日に外貨の価値が下がっていれば元本を外貨で払い戻す権利を銀行側が持つなどの二重通貨定期預金、(b)預け入れ期間が複数設定されており、市場環境によって満期日を選択する権利を銀行が持つ満期日変更特約付定期預金などがある。

仕組債は証券会社が販売する際に十分といえないまでも、証券取引法によって規制されてきた。銀行法はリスク商品を販売することを想定していなかったため、証券取引法と比べて緩やかであった。銀行法の下元本が割れるリスクを説明せずに販売された仕組預金は社会問題にまで発展したため、証券取引法から改正された金融商品取引法は仕組預金まで規制を広げている。全国銀行公正取引協議会は、平成19年4月19日に『仕組預金にかかる表示について』という仕組預金の広告に関するガイドラインを公表した。「デリバティブ預金」として仕組預金を売っていた三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行は、販売停止にまで追い込まれた。

何だか小難しい話で分かりづらいですね。ここで注目してほしいのは、仕組預金は証券取引法で規制されるようなリスク商品=元本割れする可能性がある商品であることです。

え?預金だから投資している訳じゃないのに?と思われますよね。そこがミソで、実は仕組預金とは、「預金」の名を冠したれっきとした投資商品なのです。銀行のパンフレットなどを見ても、非常にちっちゃい字で「この商品は元本割れするリスクがあります」と必ず書かれているはずです。

そんな…安全に資産を増やしたいから「預金」を選んでいるのに、全然安全じゃないなんて…ショックを受けちゃいますよね。ただ、みのりた自身は、投資商品が悪いとは全く思いません。資産を増やしたいならリスクを取るのは当たり前だからです。

リスク無しで安全に資産を増やせる方法なんてありはしません。これはきちんと理解しておくべき理です。

 

仕組預金の主な種類

話を仕組預金に戻しましょう。上のWikiの記述によれば、主に2つの種類があるようです。

  1. 円で預け入れてその時に約定した外貨で運用し、満期日に外貨の価値が下がっていれば元本を外貨で払い戻す権利を銀行側が持つなどの二重通貨定期預金
  2. 預け入れ期間が複数設定されており、市場環境によって満期日を選択する権利を銀行が持つ満期日変更特約付定期預金

実はこれらは、ネット銀行などでよくキャンペーンが打たれている商品です。今回は1番の「二重通貨定期預金」に焦点を当てますので、二重通貨定期預金の代表的なものを以下に並べてみました。

更にこの中でもじぶん銀行の「スイッチ円定期預金」を例に、具体的なリスクやデメリットなどについて解説していきます。なお、他行の商品も、名称は違えど基本的に仕組は同じです。

スイッチ円定期預金とは

商品概要

まず、どんな商品なのか概要を一覧表にまとめたものが以下の表になります。2018年7月現在は、米ドルと豪ドル2種類の募集があるようです。

※万一の中途解約の場合は、元本割れの可能性があります。

1ヶ月とかなり短期間の預金であること、金利が年利で5.5%と、普通の定期預金と比べると20倍近い高金利であることが見て分かります。

注意ポイント!

年利5.5%は1年間運用した場合の金利ですから、1ヶ月ものの場合、元本の0.46%の金額が利息として受け取れるだけです。まずここはよく理解しておきましょう!

金利計算の基本的な考え方は、以前にこちらの記事でご紹介しています↓↓↓

定期預金とは?どのくらい増える?仕組みをわかりやすく説明します!
定期預金とは?どのくらい増える?仕組みをわかりやすく説明します!

更に上の表を見ると、下の方に特徴的な言葉が出て来ます。まず、払戻元本が「円または米ドル/豪ドル」となっている、つまり円で預けたのに外貨で帰ってくる可能性がある点、そして元本保証で書かれているように、「元本が外貨で払戻しとなった場合、円での評価額がマイナスとなる場合がある」という点です。

むむむ、どういう仕組なんでしょう?次で詳しく解説していきます。

 

商品の仕組み

じぶん銀行の公式にある商品説明では、こんな図が用いられて説明されています。

引用︰じぶん銀行HP「スイッチ円定期」より

まず、預け入れ日の翌日のレートで基準となる外貨の単価(ここでは基準単価と呼びます)が決まります。図で言うと1ドル100円ですね。そしてそこから1ヶ月間、じぶん銀行が外貨で運用をします。

ちなみに、円↔ドルのように異なる通貨を換算する際は、為替手数料と呼ばれる手数料が発生します(じぶん銀行の場合は1ドル25銭)。本来は最初に100万円→1万ドルに替える際も手数料がかかるはずなのですが、これは事実上無料になっています。

そして満期日の3営業日前に基準単価と比較するための単価(比較単価と呼びます)が決まります(図のお受取りと書かれた箇所)。

この比較単価が基準単価と同じ、または基準単価よリ大きい(=円安の)場合は、元本を預けた時と同じく円で、基準単価より小さい(=円高の)場合は米ドルで、それぞれ払い戻される仕組みです。

何でわざわざこんな面倒な仕組みにしているのか?これまた調べてみると、銀行側のなかなか強かな思惑が見えて来ました。次にこの商品のリスクについて、具体的な解説をしていきます。

MEMO
本商品の詳細が知りたい方は、じぶん銀行の公式HPをご参照ください。
スイッチ円定期預金(円仕組預金)

スイッチ円定期預金のリスク

この商品には、大きく分けて3つのリスクがあり、特に注意しなければならないのは2、3番です。

1. 中途解約リスク

募集期間が1ヶ月と短期間なので、よほどのことがない限り中途解約はしないと思いますが、万一解約しようと思うと大きく元本割れしますし、利息はもちろん受け取れません。貯蓄型の保険と似ていますね。

 

2. 為替変動リスク

為替というのは、異なる通貨を換算するレートのことを指します。その時の換算レートによって利益が出たり損が出たりするのが常で、これを為替変動リスクと呼ぶのですが、スイッチ円定期預金の場合、利益は受け取れないのに損は丸被りするという、ハイリスクローリターンな設計になっています。

まず、この預金で預ける側が受けられるうま味(うれしさ)は、普通預金よりは高い金利の利息のみです。しかも高金利とは言え1ヶ月分ですから、100万円預けても手取りは3600円程度です。まぁこの超低金利のご時世にあっては、多少うれしい金額かも知れませんね。

しかし、もし預入日より円安になった場合、ドル→円に換算すると利益が出る筈です(これを為替差益と言います)。100万円を1ドル100円で預けたら1万ドルですが、もし仮に1ヵ月後に1ドル103円になっていたら、この預金は103万円に増えるはずですね。

3万円はどこに行ったのでしょう?預けた人が受け取れる?いいえ、この利益は全て銀行の物になるのです。例え大きく利益が出ても、あなたの元には利息以外一銭も入って来ません。

注意
厳密には換算には手数料がかかるので、3万円よりは数千円少なくなります

一方、預入日より円高になった場合を考えますと、仮に1ドル97円になったとして、ドル→円に換算すると100万円が97万円に減ってしまいます(これを為替差損と言います)。この状態ではドルで元本が払い戻されますが、普通の日本在住の日本人なら円で使いたいですよね。預けたお金返してよと下ろそうとすると、何故か97万円にしかならない上に換算手数料がかかって、資産が大きく目減りしてしまう事になります。

これじゃあ銀行だって損じゃないかって?いえいえ、そうでもない所がこの商品の怖い所です。

銀行は最初に100万円→1万ドルに換算する時の手数料を肩代わりしていますから、為替手数料分+利息分は確かに損しますね。しかし、どんなに円高が進んだってあなたの預金を100万円にして戻す必要は無いし、逆にあなたがドル→円換算する時には、改めて為替手数料を手に入れることができます。

つまり、円高時は利息分の金額を損しますが、円安時には出た利益を丸儲けすることができるので、銀行にとってはローリスクハイリターンなおいしい商品なのです。そりゃガンガンキャンペーン打って少しでも利用させたい訳です。

銀行員
ちょっとお金(最初の円→外貨手数料分と利息分)あげるから、その代わりに円安で出る大きな利益は全部おれ達(銀行)にちょうだいね!でも利益が出なかったら、俺ら損するの嫌だから、君らが全部被害こうむってね!あ、あと払った利息少しでも取り戻したいから、円に戻す時は手数料ちょうだいね!

どうでしょう、すごいセコい感じがしませんか?こんなビックリするほどうま味の無い商品があるのかと、個人的にはビックリしました。しかも、こんなギャンブルな金融商品に「定期預金」という名前を付けるなんて…今回調べてみて、仕組預金の不合理さを垣間見た気がしました。

3. 外貨で戻されたお金が塩漬け化するリスク

3つ目は、2つ目と密接に関係したリスクです。基準価格より円高になり外貨で払い戻された元本が、次に基準価額+手数料分だけ円安になるまで引き出せないリスクです。株などで、元本割れして売るに売れない状態を「塩漬け」と呼ぶので、ここでは塩漬けリスクと命名します。

じぶん銀行のHPに、スイッチ円定期預金の利用者の声というのが載っているのですが、その中に「外貨で払い戻されても、次に円安になるまで待てばいいので、損したとは感じない」というような内容があります。確かにその通りです。その通りなんですが、為替の値動きなんて、誰にも正確に予想できるもんじゃありません。

何年も外貨のまま使えもせず持っていなければならない可能性もあるんです!

下の図を見て下さい。これはじぶん銀行のHPから過去の米ドル⇔円の為替レートを抜粋させてもらったものです。例えば2015年7月、1ドル125円ほどでスイッチ円定期預金に預け、1か月後に外貨で払い戻された人は、2018年7月現在まで1度も当時のレートに戻っていませんから、未だに円に換算できていないはずです。

引用:じぶん銀行HP「為替レート&チャート」より

3年間ですよ、3年間。その間外貨定期預金を利用したりして、外貨でせっせと元本を増やすにしても、彼らが必要な円を手に入れられるのはいつの日なんでしょうね?

塩漬けリスクが怖いのは、本当に使いたい時に必要なお金が手元に残っていないこと、そしてよりお得な金融商品を利用して資産を増やすチャンスをみすみす逃してしまうことです。株をやっていると、痛いほど分かるリスクです…

 

ということで、リスクが大きい割にリターンが小さいこのスイッチ円定期預金、みのりたは決して利用しないことにしました。

為替リスクを取るなら、外貨預金やFXで直接取引した方がよっぽどメリットが大きいですし、生涯日本を離れる予定がなく確実に資産を増やしたい人は、外貨はあまり積極的に利用すべきではないと思いますね。

もし表面的な金利の高さにつられて、この手の商品をよく理解せずに購入しようとしている方がいましたら、今一度リスクやデメリットについてよくお考え下さい。

まとめ

仕組預金の意味、そしてその中でも二重通貨定期預金について、じぶん銀行の「スイッチ円定期預金」を例に解説しました。

仕組預金は通常の預金には無い高金利が魅力に映る一方、預金とは名ばかりの投資商品です。その中でもスイッチ円定期預金は、いくら「定期預金」という名が付いていても、そして一見高金利に見えても、実際には為替リスクという大きなリスクを背負っていて、更にその中のマイナス面だけを全面に負わされるものでした。

もし本当に為替リスクを負って運用するなら、それこそFXなどで運用した方がよっぽど増えますし、わざわざスイッチ円定期預金で資産を運用するメリットはほぼ無いと言えます。

みのりたはこのようなタイプの預金には決して手を出すつもりはありませんが、投資は自己責任です。今回ご紹介したようなリスクについて十分理解した上で、それでも「いちいち自分で勉強するのは面倒くさい」「増えたらラッキー」と思える方は、キャンペーン中の今、一度購入してみるのも良いと思います。