みのりたです。
我々会社員にとって、年の終わりの大事なイベントと言えば年末調整じゃないでしょうか。ほとんど節税術なんて使えないサラリーマンにとっては、少しでも還付金を多くもらうために、「控除」と名の付く書類は少しでも多く、確実に提出しておきたいものです。
今回は、そんな年末調整の中でも、恐らく誰しもが適用されるであろう「保険料控除(生命保険料控除)」に着目しました。いつも何となく提出しているけど、実際どれ位還付金が戻って来るの?という疑問にお答えすべく、還付金の計算方法について解説します。
もし保険料控除目当てで保険に入っている方などいましたら、ちょっと見直した方が良い可能性もありますので、是非参考にしてみて下さい。
その他年末調整で戻って来るお金についてはこちらでまとめています↓↓↓
年末調整必要な書類や手続きは?保険料控除や住宅ローン控除など紹介!
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目次
生命保険料控除とは
俗に言う保険料控除は「生命保険料控除」と呼ばれる所得控除の1つで、1月~12月の1年間に払い込んだ生命保険料に応じて、一定の金額が契約者=保険料を負担している人の年間所得(年収ではありません)から差し引かれる制度です。
例えば、所得が300万円のAさんが1年間に10万円の保険料控除を受ける場合、Aさんのその年の所得は、300-10=290万円だったとして、税金が計算されることになります。かなり乱暴ですが、所得税の税率が10%だと仮定すると、
- 保険料控除無しの場合:300万円×10%=30万円
- 保険料控除有りの場合:290万円×10%=29万円
このように1万円税金が軽くなり、会社員であれば年末調整で、自営業者であれば確定申告で、それぞれ支払った税金が還元されるのです。また、翌年の住民税も同じく1万円軽減されることになります。生命保険や医療保険などに加入している人は、是非忘れずに使いたい制度ですね。
保険料控除で戻ってくる金額の目安
保険料控除で戻ってくる税金は、所得税と住民税がありますが、この内、年末調整や確定申告で直接還元されるのは所得税だけで、住民税は次年度支払う住民税額が軽減されるという形で還元されます。これは他の控除でも同じことです。予め知っておきましょう。
具体的に戻って来る金額を知りたい場合、本来は以下のように3つの段階を踏んで計算していく必要があります。
- 控除対象となる支払った保険料を把握する
- 保険料控除額を算出する
- 自分の所得税率から還付金額を計算する
結論から知りたい!という方向けに、最終的な計算式だけ先にご紹介しますと、こうなります。
- 控除額[円] × 所得税率[%] = 戻って来る所得税額[円]
- 控除額[円] × 10 % = 戻って来る住民税額[円]
住民税額は細かくは10%ではない方もいらっしゃいますが、一般的な会社員の方であれば、目安を知る分には10%と思っておけば問題ないと思います。ただ、所得税は所得金額に応じて税率がこれだけ大きく変わりますので、税率表を以下に掲載します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁「所得税の税率」
先ほどの計算式に税率を当てはめて考えると、一般的な会社員の場合、保険料控除で戻って来る金額は、控除された金額のせいぜい1~3割であることがお分かり頂けると思います。
次項以降で具体的な控除額の計算方法をご紹介しますが、思った以上に(払った金額の割に)戻って来る金額は少ないということを、よく覚えておいてください。会社員の数少ない節税術である医療費控除も同じですが、結構悲しくなります。
生命保険料控除の対象となる保険の種類
生命保険料控除は、保険を契約した年によって新契約と旧契約に分けられます。具体的には、平成24年つまり2012年以降かそれ以前かで、対象となる保険も控除の金額も大きく異なります。
新契約と旧契約の大きな違いは、介護医療保険の控除枠が新設されたことです。平成24年(2012年)以降に契約した場合は介護・医療保険も保険料控除の対象となりますが、それより前に契約した場合は対象となりません。
新契約 (平成24年1月1日以後の契約) |
旧契約 (平成23年12月31日以前の契約) |
|
---|---|---|
控除の種類 | ・一般生命保険料控除 ・介護医療保険料控除 ・個人年金保険料控除 |
・一般生命保険料控除 ・個人年金保険料控除 |
ご自身が契約している保険がどの保険料控除枠に含まれるのかは、以下を参考にして下さい。
- 財形保険
- 住宅ローンの団信(団体信用生命保険)
- 保険期間が5年未満の貯蓄型保険
一般生命保険料
死亡保障などが付いた普通の生命保険、貯蓄性のある終身保険、学資保険などが含まれます。「これってどこに入るの?」と疑問に思うような保険は、この一般生命保険料に含まれることが多いです。
介護医療保険料
医療保険や介護保険がこちらに含まれます。
個人年金保険
個人年金は結構細かい条件が付いている上、個人年金保険料税制適格特約が付いていなければこちらの枠に含まれません。「私は個人年金保険に入っているから」と思っていても、実は一般生命保険料に含まれてしまうケースもありますので、予め契約内容をよく確認しておきましょう。
- 年金受取人が契約者本人またはその配偶者であること
- 年金受取人は被保険者と同一人物であること
- 保険料払込期間が10年以上であること
※一時払いだと対象外になります - 年金の受取開始が60歳以降、かつ年金受取期間が10年以上であること
なお「これって保険料控除の対象?」と不安になった方は、対象となる保険契約について国税庁のHPで詳細を確認してみて下さい。
ちなみに、共済などでは1つの契約で生命保険と医療保険が含まれる保険もありますよね。そういう場合、支払った保険料の一部が一般生命保険、残りが介護医療保険といったように複数の枠に振り分けられます。具体的な金額等は、各保険会社から送られてくる控除証明書を確認する必要がありますが、年末調整での申請時にはちょっとひと手間かかることを覚えておきましょう。
生命保険料控除の上限金額
控除額は、一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険それぞれの「年間払込保険料」の合計金額から算出します。年間払込保険料の金額については、毎年10月頃に各保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」に記載されています。これは会社へ原本を提出しなければならないものなので、失くさないよう大切に保管しておきましょう・
先ほどご説明した新契約と旧契約とで控除の金額が異なりますが、どんな保険をどれだけ契約していても、生命保険料控除が受けられる金額は12万円が最大となります。
出典:国税庁「生命保険料控除」
新契約における保険料控除額
平成24年(2012年)以降に契約した保険に関して支払った保険料から控除される金額は、以下の通りです。
一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料それぞれの控除枠で、最大4万円(住民税は28000円)まで控除されることになります。つまり、保険料控除をフルに活用しても、控除額は4万円 × 3 = 12万円が最大(住民税は84000円)となる訳です。
所得税 | 住民税 | |||
---|---|---|---|---|
区分 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
一般生命保険料 介護医療保険料 個人年金保険料 |
20000円以下 | 払込保険料全額 | 12000円以下 | 払込保険料全額 |
20000円超 40000円以下 |
(払込保険料 × 1/2) + 10000円 |
12000円超 32000円以下 |
(払込保険料 × 1/2) + 6000円 |
|
40000円超 80000円以下 |
(払込保険料 × 1/4) + 20000円 |
32000円超 56000円以下 |
(払込保険料 × 1/4) + 14000円 |
|
80000円超 | 一律40000円 | 56000円超 | 一律28000円 |
ちなみに年間払込保険料が8万円を超えると、後はどんなに多く保険料を支払っても4万円しか控除されません。年間8万円=月6600円程ですから、学資保険にでも入ったら足が出る金額です(個人年金保険も然り)。
「保険料控除があるから、保険に加入しておいた方が節税になってお得」と保険の勧誘を受けることもあるかも知れませんが、年8万円以上の契約は正直そんなにお得ではありません。老後の資産形成のためにと個人年金保険に加入する方がいますが、節税効果を享受したいなら、支払った金額が全額控除される確定拠出年金の方が、断然お得なのです。
ちなみにみのりたの場合、一般生命保険料はフルで控除枠を使って(かつガンガン足が出て)いますが、後は医療保険でちょびっと控除されるだけなので、年間払込保険料は20万円を超えるのに、保険料控除は毎年たったの5万円程度です。一方、確定拠出年金では毎年15万円近く控除されており、これだけで年間10万円近く(還付金にして1,2万円ほど)も差が出ます。
確定拠出年金は投資信託を購入していくため、元本割れのリスクがもちろんありますが、積立によるリスク分散をきちんとしておけば、そう損をすることはありません。この辺については、別途解説したいと思います。
旧契約における保険料控除額
旧契約では介護医療保険の項目がありませんでしたが、一方で年間払込保険料額は10万円まで控除が認められていました。保険料控除をフルに活用した場合、控除額は5万円 × 2 = 10万円が最大(住民税は7万円)です。
所得税 | 住民税 | |||
---|---|---|---|---|
区分 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
一般生命保険料 個人年金保険料 |
25000円以下 | 払込保険料全額 | 15000円以下 | 払込保険料全額 |
25000円超 50000円以下 |
(払込保険料 × 1/2) + 12500円 |
15000円超 40000円以下 |
(払込保険料 × 1/2) + 7500円 |
|
50000円超 100000円以下 |
(払込保険料 × 1/4) + 25000円 |
40000円超 70000円以下 |
(払込保険料 × 1/4) + 17500円 |
|
100000円超 | 一律50000円 | 70000円超 | 一律35000円 |
新旧の契約が混在している場合
もしも新契約にあたる保険と旧契約にあたる保険を両方契約している場合、「2つの控除を両方受けられる♪」とは問屋がおろしません。新旧混合している時は以下3パターンで控除額を計算し、その中で最も控除額が大きくなるパターンを採用する、という面倒なことになります。
- 新契約のみの控除額を計算
- 旧契約のみの控除額を計算
- 両方を合算して控除額を計算
※控除枠としては新契約に準じ、最大4万円となります
例えば、一般生命保険を新契約で5万円、旧契約で5万円の計10万円払っているとしましょう(それぞれ年間)。この場合、所得税の控除額を3パターン計算すると、
- 新契約のみの控除額:5万円 × 1/4 + 2万円 = 32500円
- 旧契約のみの控除額:5万円 × 1/2 + 12500円 = 37500円
- 両方を合算した控除額:5万円 + 5万円 = 10万円 > 8万円となるので4万円
最も控除額が大きくなるのは3のパターンですから、4万円が控除されることになります。
正直、年末調整を受けるだけの会社員にとっては「書類の書き方が面倒だなー」位のものなのですが、実際に手続きを行う会社の税務担当者は、こうして毎年大変な思いをしていらっしゃるんですね。何だか頭が下がる思いです。
保険料控除による還付金の計算方法
控除額がわかれば、後はご自身の所得(課税所得)さえわかれば、還元されるお金は簡単に計算できます。昨年の源泉徴収票をお持ちの方は、以下のように課税所得を計算して下さい。
この課税所得の金額を本記事の前半でご紹介した「所得税率の目安表」と照らし合わせて、ご自身の税率を確認します。
所得税率の目安表
課税所得金額 | 税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円を超え 330万円以下 | 10% |
330万円を超え 695万円以下 | 20% |
695万円を超え 900万円以下 | 23% |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
出典:国税庁「所得税の税率」
例えば、課税所得が300万円の方が10万円の保険料控除を受けた場合、所得税率は10%ですから、10万円 × 10% = 1万円が実際に還付される金額ということになります。
年収1000万円未満で妻子を養っているというような会社員の場合、多くは税率が10%程度だと思いますので、支払った金額の1割が年末調整で戻ってくると思っておけば、そう大きな間違いはないかも知れません。
まとめ
会社員に年に1度訪れる年末調整、その中で「保険料控除」について、還付金がいくら戻ってくるのか、具体的な計算方法について解説しました。段階としては以下の3つです。
- 控除対象となる支払った保険料を把握する
- 保険料控除額を算出する
- 自分の所得税率から還付金額を計算する
実際に払い込んだ保険料がそのまま戻ってくる訳ではなく、しかも控除には最大でも12万円という上限があります。一般的な会社員であれば、控除額の1割~3割程度が戻る程度であるということを、認識しておきましょう。
とは言え、収入がお上にガッツリ把握されている会社員にとって、保険料控除は貴重な節税術です。本記事を参考に、いくら戻ってくるのか是非計算してみて下さい。12月のお給料日が、より楽しみになることと思います!
年末調整のその他の控除についても、こちらでまとめています↓↓↓
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